ピーターラビット展〜ビアトリクス・ポター生誕150周年

@Bunkamura ザ・ミュージアム


イングランド湖水地方の、雄大だけど静かでのどかな大自然と田舎暮らしの中にあって、その畑や森で暮らすウサギやリス、ネズミたちの小さな冒険の世界。

展覧会の中でその物語の1つ1つが丁寧に説明されていたこともあってか、会場全体がピーターラビットの世界の草木がそよめくような風が吹き、その香りさえ漂ってきそうな雰囲気で、とても心地よい。

 

ビアトリクス・ポターの絵を挿絵ではなく絵画として見る機会はなかなか貴重だろう。そして、どうしても印刷物だと色彩のコントラストが強めに出てしまうが、実際の原画はもっと柔らかい日差しが差し込んでいて、さながらカミーユピサロの描く印象派の風景画でも見ているようである。

 

博物学に興味持ち、死んだウサギを解剖して骨格を調べたポターらしく、描かれたどの動物たちも、キャラクターでありながら変にデフォルメされすぎない。絵の中のウサギだが触ればふんわりと毛並みが柔らかく、血の通ったいきものの温もりや、お尻のふんわりずっしりした感じ、息使いによるお腹の動きさえ感じられそうなリアリティがある。なでれば鼻をひくひくしそうな!そこが、いわゆるマンガキャラクターとは違う。実にかわいい。

小動物としての温もりや柔らかさを残しながら、しかも解剖学的にそこまで「変じゃない」動きを残しながら、ある時はホクホクとにんじんをほうばり、ある時は捕まりそうになって涙を流して泣く。そこに、ポター自身の並々ならない動物たちへの愛情が垣間見える。

 

そんな動物たちが印象派の風景画のような世界で二本足で立って洋服を着て大冒険するのだから、どこか現実と空想が絶妙に交錯してて、藤子・F・不二雄が描いたSF「すこし、ふしぎ」が、遠い異国の地で100年も前に違う形で実現されてたんだなぁ、と思いを馳せる。

 

日本のキャラクター文化はデフォルメが過ぎる感があるから、そこに食傷している人にとっては逆に新鮮なのかもしれない。


子供たちは、そんなピーター・ラビットの世界に入り込むことで、動物の生態や動物に向けられる愛情、自然保護や、ファンタジーとしてのSF「すこし、ふしぎ」や、印象派風景画の世界や、いろんなことを吸収していくんだろうな。

 

とても心地よい展覧会だった。